賑わいのある四条河原町周辺からは少し離れた地域。従来この地域は西陣を中心とした織物産業の生産地でした。 堀川が暗渠になるまでは川では友禅流しなどの風景を目の当たりにすることができ、今現在も多くの染工場や織工場などがこの地域を支えています。 京都 京町家 繭は感度の高い場所に人を包み込む余剰空間を設定し、“ものづくり”を中心とした情報基地・居場所を皆様にご提供致します。

表の通りに面した格子をはじめ、ガラス戸に至るまでこの町家の建具は全て、他の町家で使われていた物を再利用しています。 ガラス戸のガラスの多くは製造技術の未熟な時代のもので、外の景色がゆらいで見える「ゆらぎガラス」を使用しています。特にカフェのガラス戸は必見です。

照明器具の半分近くは解体前の町家から譲り受けたものです。 残りのものはアンティークショップやリサイクルショップで部品ごとに購入し、修理・組み立てをしたものを使用しています。 小径、廊下、室内、トイレ。それぞれの空間に合わせたセレクト。一つとして同じものがないおもしろさを体感してみて下さい。

二つの主屋の外部の壁は「鉄粉入り稲荷山黄土水捏ね仕上げ」と呼ばれる仕上げを施しています。壁の表面の黒っぽい部分は土の持つ鉄分が表面に現れたもので「サビ」と呼ばれています。 この仕上げは鉄粉の周囲からサビが浮き上がり、蛍が鱗粉しているように見えることから特に「蛍壁」と呼ばれる珍しい仕上げです。

トイレ外部の壁は「錆土(別名大阪土)引摺り仕上げ」です。鮮やかな山吹色の土を特殊な鍐で波たたせて仕上げています。 茶室等にしばしば使われている仕上げ方法です。トイレの内外には同じ土で三つの異なる表現で仕上げを施している壁があり、その違いを楽しんで頂きたいです。

板張り壁として、坪庭横のトイレ内部など何カ所かに市内の寺院で天井板として何百年も使用されていたものを再利用しています。 鋸で一枚ずつ板を挽いていた時代のもので、その風格を損なわないようにあえて鋸の痕がはっきり見える裏面をおもてに使っています。

二つの「流し」は取り壊される町家から買い取り、修理再生した物です。 一つはタイルを貼ったもの。もう一方は「ジントギ」と呼ばれるモルタルを砥石で研いて白い石を浮かび上がらせたもので、どちらも昔の町家にはおなじみの流しです。 左写真は「ジントギ」です。

二つあるトイレの手洗い器は大屋宇一郎氏によるオーダーメイドの陶器を使用しています。 手洗い器を納めているカウンターは市内の町家の床材として使用されていた桜の一枚板で、伝統的な顔料である松煙墨、紅柄・柿渋を調合したものを塗り込む「古色」を施しています。

雨樋の水仕舞いに古瓦で受けをつくり、玉砂利を敷き詰めました。 この瓦は市内の寺院の修復工事で廃棄処分になるところを譲り受けてきたもので江戸時代宝暦年間(約250年前)のものです。 周囲の犬走りは修学院離宮の一二三(ひふみ)石状に小石を配しています。

露地に敷いた板石は解体前の民家の庭から譲り受けたもので、それ以前はおそらく市電の路面に敷かれていたであろう一品です。 露地・坪庭の配石、植栽は庭師の河丘草生氏の手によって作り出された空間芸術です。












